痩せているのに糖尿病?やせ型の人こそ知っておきたい血糖の話

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至です。

「私は痩せているから、糖尿病とは無縁だろう」。そう考えている方は少なくありません。健診で血糖値の異常を指摘されても、「太っていないのに、なぜ?」と戸惑う方もいらっしゃいます。

しかし、糖尿病専門医の立場から申し上げると、痩せている方でも糖尿病になることは珍しくありません。むしろ、日本人にはやせ型の糖尿病が一定数存在し、体型だけで糖尿病リスクを判断することはできないのです。

本稿では、なぜ痩せていても糖尿病になるのか、その背景にある日本人特有の体質、そしてやせ型の方が気をつけたいポイントについて解説します。

「糖尿病=太った人の病気」ではない

まず、多くの方が抱いている「糖尿病は太っている人がなる病気」というイメージについて考えてみます。

確かに、肥満は2型糖尿病の重要なリスク要因です。しかし、それは「痩せている人は糖尿病にならない」ということを意味しません。実際、日本の2型糖尿病の患者さんのうち、BMIが25未満のいわゆる「非肥満」に分類される方は、決して少数派ではありません。

つまり、「太っていないから大丈夫」という思い込みが、かえって糖尿病の発見を遅らせてしまうことがあるのです。体型にかかわらず、血糖の状態は一度きちんと確認しておく価値があります。

なぜ痩せていても糖尿病になるのか

ここで、当院が普段から繰り返しお伝えしている「体質」の話につながります。私は、2型糖尿病を「生活習慣が悪いから起こる病気」というよりも、食事や運動などの少しの変化で血糖に大きな影響が出る体質の病気だと考えています。この考え方については、生活習慣病についての記事でも詳しく述べています。

2型糖尿病の発症には、大きく分けて二つの要素が関わります。一つは「インスリンの効きにくさ(インスリン抵抗性)」、もう一つは「インスリンの分泌そのものの低下」です。

欧米人の糖尿病は、肥満に伴うインスリン抵抗性が主な要因となることが多いとされています。一方で、日本人を含むアジア人は、欧米人と比べてインスリンを分泌する能力がもともと低いことが知られています。研究によっては、欧米人の半分程度とも報告されています。

つまり、日本人は「インスリンをたくさん出して血糖を抑える」という力が、体質的に弱い傾向があるのです。そのため、それほど太っていなくても、インスリン分泌が追いつかなくなると血糖値が上がってしまいます。これが、痩せていても糖尿病になる大きな理由の一つです。

繰り返しになりますが、糖尿病は「食べ過ぎや怠けが原因」という単純な話ではなく、こうした体質が大きく関わる疾患です。だからこそ、「自分は痩せているし、暴飲暴食もしていないから大丈夫」という判断は、必ずしも当てはまらないのです。

「やせメタボ」と異所性脂肪

もう一つ、見た目の体型だけでは分からない要素があります。それが「異所性脂肪」です。

脂肪は通常、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄えられます。しかし、本来つくべきでない場所、たとえば肝臓や筋肉に脂肪が蓄積することがあります。これを異所性脂肪と呼び、肝臓についたものが脂肪肝、筋肉についたものが脂肪筋です。

日本人を含むアジア人は、皮下脂肪に脂肪をため込む能力が比較的低く、痩せていても内臓脂肪や異所性脂肪がたまりやすい傾向があるとされています。見た目は細くても、体の内側には脂肪が蓄積している、いわゆる「やせメタボ」「隠れ肥満」という状態です。

肝臓や筋肉に脂肪がたまると、その脂肪がインスリンの働きを妨げ、インスリン抵抗性を引き起こします。つまり、痩せていても、内臓脂肪や脂肪肝を介してインスリンが効きにくくなり、血糖値が上がることがあるのです。脂肪肝と糖尿病の関係については、別の記事でも詳しく解説する予定です。

食事の総カロリーが多くなくても、バランスのいい食生活をしていても、運動の習慣があったとしても、こうした異所性脂肪が増えていく人は確実に存在します。生活状況や体重計の数字だけでは、体の中の状態は分からないのです。

やせ型の糖尿病は、むしろ注意が必要なことも

意外に思われるかもしれませんが、やせ型の糖尿病は、肥満型の糖尿病よりも管理が難しい場合があります

肥満に伴うインスリン抵抗性が主体の糖尿病では、膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞)はまだ元気なことが多く、減量によって内臓脂肪が減れば、インスリンの効きが回復して血糖が改善しやすい傾向があります。

一方、もともとインスリン分泌の低下が主体のやせ型の糖尿病では、状況が異なります。血糖が高い状態を放置すると、ただでさえ少ないインスリンを出そうと膵臓が無理を重ね、β細胞がさらに疲弊してしまうことがあります。その結果、インスリンがますます出にくくなり、糖尿病が進行しやすくなるのです。だからこそ、やせ型の方であったとしても、早期に血糖の状態を把握し、適切に対応することが大切になります。

なお、痩せていて血糖が高い場合には、2型糖尿病だけでなく、緩徐進行性1型糖尿病といった、インスリン分泌が徐々に低下していくタイプの糖尿病が隠れていることもあります。このタイプは、初期には2型糖尿病と見分けがつきにくいこともあり、専門的な評価が必要です。痩せているのに血糖が高いという場合は、こうした可能性も含めて、糖尿病専門医による見極めが役立ちます。

やせ型の方が気をつけたいサイン・検査

やせ型の方が血糖の異常に気づくためには、どうすればよいのでしょうか。

最も確実なのは、やはり健康診断での血糖値やHbA1cのチェックです。やせ型の糖尿病では、特に食後の血糖値が高くなりやすい一方、空腹時の血糖値は比較的正常に近いことがあります。健診の空腹時血糖だけでは見逃されることもあるため、HbA1cの値もあわせて確認することが大切です。HbA1cを良好に保つための生活の工夫については、別の記事でもまとめています。

また、「やせメタボ」「隠れ肥満」の場合、肥満の方と同様にインスリン抵抗性が出現します。その結果、高血糖が出現する前に、高血圧や中性脂肪の高値、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低値を認めることが多いです。健康診断でこれらの異常が出てきていないか見ておくとよいでしょう。

やせ型の方の異所性脂肪の対策として、運動することは大変いいことです。運動には、筋肉での糖の利用を促し、インスリンの効きを改善する働きがあります。当院では、無理なく続けられる運動の取り入れ方についてもお伝えしています。

さらに、次のような症状があるときは、体型にかかわらず注意が必要です。

のどの渇きや水分をとる量が増えた  /  尿の回数や量が増えた  /  食べているのに体重が減ってきた  /  全身の倦怠感が続く

こうした糖尿病のサインについては、別の記事でチェックリストとしてまとめています。

まとめ

「痩せているから糖尿病とは無縁」という思い込みは、糖尿病の発見を遅らせる原因になりかねません。

日本人はもともとインスリンを分泌する能力が体質的に低く、痩せていても糖尿病になり得ます。さらに、見た目には分からない異所性脂肪が、インスリンの働きを妨げていることもあります。そして、やせ型の糖尿病は、放置すると進行しやすい側面も持っています。

大切なのは、体型で自己判断せず、血糖、血圧、脂質の状態を客観的な数値で確認しておくことです。健診で血糖値やHbA1cの異常だけでなく、血圧や脂質の異常を指摘された方、気になる症状がある方は、体型にかかわらず一度ご相談ください。

当院では、私自身が1型糖尿病であり、糖尿病専門医も取得しております。やせ型の方の血糖の評価から、糖尿病のタイプの見極めまで、患者さんお一人おひとりの状況に応じた対応を心がけています。もし他のクリニックさんで合わないと感じられた方も、ぜひお気軽にお越しください。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至