かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至
「最近、やたらと喉が渇く。水を飲んでも追いつかない」——外来でこうしたご相談をいただくことは少なくありません。忙しさや季節の乾燥のせいだろうと片づけてしまいがちですが、こうした変化が糖尿病のサインである場合があります。
2型糖尿病は、痛みのような明確な自覚症状に乏しいまま進行するのが特徴です。そのため、検診などで採血を行い、糖尿病かどうかのチェックをすることが一番好ましいです。糖尿病の症状は血糖がかなり高くなってから出現してくるのですが、そのような体の変化を拾い上げることができたのなら、発見の手がかりとなることもあります。
本稿では、初期に現れやすい10のサインをチェックリスト形式で整理し、それぞれの症状が生じる機序、検査による確認の方法、受診の目安について解説いたします。
チェックリスト:2型糖尿病を疑う10のサイン
まずは、最近1〜2か月くらいを振り返ってみてください。「たまに」ではなく、「増えた」「続いている」がポイントになります。
| サイン | こんな形で気づきやすい例 |
| 1. 喉の渇き(口が乾く) | 水を飲んでも口が渇く、夜に口がカラカラで目が覚める |
| 2. 尿が増える(頻尿・多尿) | トイレが近い、夜中に何度も起きる、量が多い気がする |
| 3. 体重が落ちる | 食事量は変わらないのに体重が減っていく |
| 4. だるさが抜けない | しっかり寝ても疲れが取れない、日中に眠い |
| 5. お腹が空きやすい | 食べたのにすぐ空腹、間食が増える |
| 6. 目がかすむ | ピントが合いにくい、ぼやける日がある |
| 7. 手足の違和感 | しびれ、ピリピリ、足がつりやすい |
| 8. 傷が治りにくい | 小さな擦り傷が長引く、化膿しやすい |
| 9. 皮膚の変化 | 乾燥・かゆみ、首や脇の下の黒ずみが目立つ |
| 10. 感染症の反復 | 膀胱炎やカンジダ、歯周病、風邪が治りにくい |
「2つ以上あるから糖尿病」と決めつけるものではありません。ただ、複数当てはまるときは、血糖を一度測ってみる必要が出てきます。
それぞれのサインについて説明
喉の渇きと尿の増加 は、高血糖に伴う最も代表的な症状であり、セットで現れやすい傾向があります。血糖値が高くなると、腎臓は余分な糖を尿に出そうとします。その際に水分も一緒に引っ張られるため尿量が増え、体の水分が不足して喉が渇くという流れです。冬場であっても起こりますが、暖房による空気の乾燥と重なると気づきにくくなります。
体重減少 は、少し意外に思われるかもしれません。2型糖尿病は肥満傾向の方に発症リスクが高い疾患ですが、高血糖が進むと細胞がブドウ糖をうまく使えなくなり、体は代わりに脂肪や筋肉を分解してエネルギーを作ろうとします。「食べているのに痩せる」という現象が起こるのはこのためです。ただし、体重が落ちる原因は他にもありますので、自己判断で放置せず、検査で確認することが大切です。
だるさや日中の眠気 は、おそらく最も見逃されやすい症状です。仕事の忙しさ、寝不足、季節の変わり目。いくらでも理由がつけられてしまいます。しかし、夜間の頻尿で睡眠が浅くなっていたり、高血糖の影響で体のエネルギー効率が落ちていたりすることが背景にある場合があります。「ここしばらく、ずっと調子が上がらない」が続いているようであれば、血糖も原因の候補に含めてみてください。
空腹感が強い にも、体の中の仕組みが関係しています。血液中にブドウ糖があっても、インスリンの働きが不十分だと細胞にうまく取り込めません。脳はそれを「エネルギーが足りない」と判断して食欲のシグナルを出します。食べる量が増えて血糖がさらに上がる、という悪循環に入りやすいため、この段階で気づけると対処の幅が広がります。
目のかすみ は、視力そのものが落ちたとは限りません。血糖値が上下すると目の中の水分バランスが変化し、一時的にピントが合いにくくなることがあります。もちろん、緑内障や白内障など別の病気の可能性もあるため、症状が続くなら眼科での確認も重要です。糖尿病には網膜症という目の合併症がありますので、早めに全体像を把握しておく意味は大きいといえます。
手足のしびれやつりやすさ は、糖尿病による神経障害が原因になっていることがあります。ただし、腰や首の問題、ビタミン不足、冷え、薬の影響など、原因は一つとは限りません。「足先の感覚が前と違う」「靴下越しの感触が変わった気がする」といった違和感があれば、血糖値も含めて確認いたします。
傷が治りにくい、や感染症を繰り返す という変化は地味ですが、見逃せないサインです。血糖が高い状態が続くと血流や免疫の働きに影響が出て、細菌やカビに対する抵抗力が落ちることがあります。歯周病がひどくなってきた、膀胱炎を何度も繰り返す、口内炎がなかなか治らない。こうした「繰り返し」は、血糖に問題がないか調べるきっかけになります。
皮膚の乾燥やかゆみ には、体の水分不足や血流の低下が関わっています。首や脇の下に現れる黒ずみ(黒色表皮腫と呼ばれることがあります)は、インスリンが効きにくい体質の方で見られることがあり、リスク評価の参考になる所見です。
早期発見には「症状」より「検査」
症状はあくまできっかけで、診断や評価の中心は検査です。健康診断でもよく見るのが、空腹時血糖値とHbA1c(過去1〜2か月の血糖の状態を反映しやすい指標) が挙げられます。
糖尿病が強く疑われる数値の目安としては、空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上などがあります(実際の診断においては、同日の複数指標の組み合わせや、別日における再検査など、所定の手順が求められます)。
境界型が疑われるときに役立つのが、75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)です。空腹時血糖が110〜125mg/dL、HbA1cが6.0〜6.4%あたりの方は、食後の上がり方を確認した方が実態に近いことがあります。逆に言うと、空腹時だけでは見えにくいタイプもいる、ということです。
速やかな受診が必要な場合
「少し気になる」という段階であれば、通常の外来受診の中で検査を進めることができます。ただし、以下のような症状が見られる場合は、脱水や代謝の異常が急速に進んでいる可能性があります。我慢せず、早めに医療機関を受診してください。
● 強い喉の渇きと多尿が急に出現し、ぐったりしている
● 短期間で体重が大きく落ち、吐き気や嘔吐を伴う
● 意識がぼんやりしている、会話がかみ合わない
受診の際には、「いつから」「どの程度」という情報が大きな手がかりになります。喉の渇きや尿の回数がいつ頃から増えたか、体重がいつから何kg変わったか、夜中に起きる回数、最近よく飲んでいるもの(スポーツドリンクや甘い飲み物など)、傷の治りや感染症に関する経過。数行のメモで構いませんので、まとめておいていただくと診察がスムーズに進みます。
早期発見は合併症予防に繋がります
2型糖尿病は、初期ほど症状が目立たない疾患です。そのため、まずは検診の数値で糖尿病、あるいは糖尿病疑いと診断を受けた方は糖尿病内科で一度検査を受けてみてください。さらに、喉の渇き、尿の増加、だるさ、体重の変化、目のかすみ、皮膚や感染症の異常など、どれも「よくある不調」に見えてしまうような症状であるチェックリストを確認するのがよいでしょう。早い段階で状態を把握しておくことが、将来の合併症を遠ざけるための最も確実な一歩となります。
当クリニックでは、血糖値やHbA1cの測定をはじめ、患者さんの状況に応じた検査・診療を行っております。気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご相談ください。
かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至


