かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至です。
「糖尿病になったら、何を食べてはいけないのか」。これは、外来でも本当によくいただくご質問です。インターネットで検索すると、「糖尿病がある場合に避けるべき食べ物ランキング」といった情報がたくさん出てきます。
ただ、糖尿病専門医として、そして私自身も1型糖尿病とともに生活してきた立場として、最初にお伝えしたいことがあります。それは、「食べてはいけないものリスト」という発想そのものを、一度見直していただきたいということです。
本稿では、血糖値を上げやすい食べ物を順にご紹介します。ただし、それは「禁止リスト」ではなく、「付き合い方に少し工夫がいる順番」として読んでいただきたいのです。なぜそう考えるのか、そしてどう付き合えばよいのかを、あわせて解説します。
「食べてはいけないもの」はほとんどない
まず知っておいていただきたいのは、糖尿病だからといって、特定の食品が完全に禁止になるわけではないということです。
もちろん、血糖値を上げやすい食べ物はあります。しかし、それらを「一切食べてはいけない」と考えると、食事が苦痛になり、長続きしません。大切なのは「何を食べないか」よりも、「何を、どのように食べるか」です。
ここには、私が普段から強調している考え方があります。糖尿病、特に2型糖尿病は、「食べ過ぎや運動不足が原因の病気」と捉えられがちですが、実際には血糖が上がりやすい体質の影響が大きい疾患です。特定の食品を悪者にして、それさえ避ければ安心、という単純な話ではないのです。
この「どう食べるか」という視点については、間食やお菓子との付き合い方をテーマにした記事でも詳しくお伝えしています。
その前提を踏まえたうえで、血糖値を上げやすい食べ物を順に見ていきましょう。
血糖値を上げやすい食べ物ランキング
以下は「食べてはいけない順」ではなく、「血糖値への影響が大きく、付き合い方に工夫がいる順」としてご覧ください。
第1位:砂糖入りの飲み物(清涼飲料水・ジュース・スポーツドリンク)
最も注意していただきたいのが、糖分を多く含む飲み物です。
液体に溶けた糖は、固形物に比べて吸収が非常に速く、血糖値を急激に上昇させます。同じ量の糖質でも、噛んで食べる食品より、飲み物のほうが血糖への影響は大きくなりがちです。「水分補給のつもり」で飲んでいたものが、実は大量の糖分摂取になっていることも珍しくありません。
スポーツドリンクや清涼飲料水の多飲については、ペットボトル症候群という観点からも注意が必要です。詳しくは初期症状に関する記事でも触れています。
もし、甘い飲み物が欲しいと思ったら、カロリー0の清涼飲料水は血糖を全く上げないため、お勧めします。人工甘味料は避けたほうがいいと思う方もおられると思いますが、日常で普通に取る分には全く問題ありません。コカコーラゼロやアクエリアスゼロは糖質の入った飲料よりも味覚では落ちますが、水やお茶で物足りないと思った時には、十分気晴らしにになりえます。
注意するべき食品はこれぐらいで、以下は簡単に記載するのみです。
第2位:精製された炭水化物(白米・白いパン・うどんなど)
第3位:菓子類・甘いもの(ケーキ・クッキー・チョコレートなど)
第4位:揚げ物・脂質の多い料理
第5位:果物の食べすぎ・フルーツジュース
ネットではこのようなランキングで糖尿病患者は食べてはいけないとする記事が多いですが、糖尿病患者は頑張るべきだというスティグマであると私は考えます。当然食べすぎは良くないですが、食べ方を注意すれば食べてはいけないものはありません。第2-5位までの食品がなぜ良くないのは、ここでは書きません。ネットで調べると山のように出てくるからです。
ランキングより大切な「食べ方」の工夫
糖尿病専門医として強調したいのは、「何を避けるか」よりも「どう食べるか」のほうが、はるかに大切だということです。
同じ食事でも、食べ方を工夫するだけで、食後の血糖値の上がり方は大きく変わります。
- 食べる順番を意識する:野菜やタンパク質を先に食べ、炭水化物を後にすると、食後の血糖上昇がゆるやかになります(ベジファースト)。
- ゆっくり、よく噛んで食べる:早食いは血糖を急上昇させます。ゆっくり食べると、インスリン分泌を促すホルモン(GLP-1)の働きも期待できます。
- 食後に軽く体を動かす:食後の軽いウォーキングは、血糖値の上昇を抑えるのに役立ちます。
- 朝食を抜かない:最初の食事を整えると、次の食事の血糖上昇も抑えられることが報告されています(セカンドミール効果)。
これらは、特定の食品を禁止するよりも、ずっと取り組みやすく、効果も期待できる工夫です。
「選ぶ・工夫する」という発想
なぜ私が「禁止リスト」という考え方を勧めないのか。それは、人間にはもともと食欲があるのですから、無理な食事制限をしすぎると、結局は長続きしないからです。
糖尿病の食事管理は、短期間の我慢比べではなく、一生をかけて無理なく続けていくものです。私自身、1型糖尿病とともに長く生活してきましたが、食事を「制限ばかりの苦行」にしてしまっては、心も体も持ちません。むしろ、食を楽しみながら、血糖と上手に付き合う方法を見つけることのほうが、ずっと大切だと感じています。
また、繰り返しになりますが、糖尿病は体質の影響が大きい疾患です。食事だけですべてが決まるわけではありません。厳しすぎる食事制限は、特にご高齢の方では低栄養やフレイル(心身の虚弱)を招き、かえって健康を損なうこともあります。「完璧」を目指すより、「無理なく続けられる」食習慣を見つけることが、結果的に血管を守ることにつながります。
自己流の食事管理に不安があるときは
食事管理は、実はとても個別性が高いものです。体質、使っている薬、合併症の有無、年齢や生活状況によって、適した食べ方は一人ひとり異なります。
インターネットの「ランキング」や「これさえ食べなければ大丈夫」といった情報をうのみにして、自己流で極端な制限をしてしまうと、栄養が偏ったり、低血糖などのリスクが生じたりすることもあります。
「今の食事の仕方が自分に合っているのか」「何から始めればよいのか」と迷ったときは、糖尿病専門医や管理栄養士に相談することをおすすめします。その方の状態に合わせて、無理のない食事の工夫を一緒に考えることができます。糖尿病内科の受診を検討されている方は、こちらの記事もご参照ください。
ランキングに振り回されないために
血糖値を上げやすい食べ物の傾向を知っておくことは、確かに役立ちます。しかし、それを「食べてはいけないものリスト」として受け取るのではなく、「付き合い方を工夫するためのヒント」として活用していただきたいのです。
糖分の多い飲み物に気をつける、精製された炭水化物を未精製のものに置き換える、食べる順番やスピードを工夫する。こうした小さな積み重ねのほうが、特定の食品を禁止するよりも、ずっと現実的で効果的です。
そして何より、食を楽しむ気持ちを失わないこと。それが、糖尿病と長く上手に付き合っていくうえで、最も大切なことだと考えています。
食事の工夫や血糖管理について気になることがあれば、一度ご相談ください。当院では、私自身が1型糖尿病であり、糖尿病専門医も取得しております。糖尿病の食事療法としてお一人おひとりの体質や生活に合わせて、無理なく続けられる食事の工夫を一緒に考えています。もし他のクリニックさんで合わないと感じられた方も、ぜひお気軽にお越しください。
かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至


