かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長の神内 謙至です
診察室で食事の話題になると、よく出てくる質問があります。「やはり間食はやめた方がいいのでしょうか」。糖尿病や血糖値の話になると、おやつは真っ先に制限すべきものだと思われがちです。実際、健康診断で血糖値を指摘されたあと、「もうお菓子は一切食べていません」と話される方もいます。
ただ、日々の診療をしていると、極端な制限が長続きしない場面も多く見かけます。最初は意欲的に取り組めても、数週間あるいは数か月経つと反動で食べ過ぎてしまう。そうした経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。
結論から言えば、間食そのものが直ちに糖尿病に悪いとは言い切れません。問題になるのは、食べ方や内容、そして血糖値への影響です。少し言い方を変えると、「どう食べるか」が重要になります。この記事では、間食と血糖値の関係、そして血糖値を上げにくいおやつの考え方について、外来でお話ししている内容をもとに整理してみたいと思います。
なぜ間食は血糖値に影響しやすいのか
食事をとると、体の中では炭水化物が分解されてブドウ糖となり、血液中に取り込まれます。これが血糖です。健康な体では、血糖が上がると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、糖を細胞へ取り込むことで血糖値は徐々に下がっていきます。
しかし、糖尿病や血糖値が高めの状態では、この調整がうまく働かないことがあります。インスリンの分泌が不足したり、体の細胞がインスリンに反応しにくくなったりすることで、血糖が高い状態が長く続いてしまうのです。
間食が問題になりやすい理由は、食事の回数が増えることで血糖が上がる機会が増えるからです。特に甘いお菓子や砂糖を多く含む飲み物は、短時間で血糖値を大きく上げやすい傾向があります。食後にまだ血糖が高い状態でおやつを食べると、血糖がさらに上がることもあります。
ただし、ここで重要なのは「間食=すべて悪い」という単純な話ではないという点です。間食の内容や量、食べる時間帯によって血糖値への影響はかなり変わります。
間食を完全にやめる必要はあるのか
糖尿病の食事療法というと、厳しい制限を思い浮かべる方もいるかもしれません。しかし実際の診療では、無理なく続けられる方法を見つけることが重要になります。長く続く生活習慣の問題だからです。
例えば、甘いお菓子を毎日のように食べていた方が突然すべてやめてしまうと、強いストレスを感じることがあります。食事の楽しみが大きく減ってしまい、結果として食事全体のバランスが崩れてしまうこともあります。
そこで外来では、「間食をどう管理するか」という視点で考えることが多くなります。量を調整する、食べる頻度を減らす、血糖値を上げにくいおやつに変える。こうした工夫を重ねることで、現実的な形に整えていきます。
もちろん血糖値の状態によっては間食を控えた方がよい場合もありますが、すべての人が同じ対応になるわけではありません。血糖値の程度や生活習慣によって考え方は変わります。
血糖値を上げにくいおやつの考え方
間食をとる場合には、血糖値が急に上がりにくいものを選ぶとよいでしょう。一般的に、砂糖や精製された炭水化物が多い食品は血糖を上げやすい傾向があります。一方、たんぱく質や脂質、食物繊維を含む食品は血糖の上昇が比較的ゆるやかになることがあります。
例えば、次のような食品は比較的血糖値への影響が穏やかなことがあります。
● 素焼きのナッツ類
● 無糖ヨーグルト
● チーズ
● ゆで卵
これらの食品は炭水化物が少なく、血糖値の急激な上昇が起こりにくいとされています。ただし、カロリーは決して低くないため、量には注意が必要です。袋ごと食べてしまうと、結果的にエネルギーの摂り過ぎになることもあります。
菓子パンや甘い飲み物、砂糖を多く使った和菓子などは血糖値を急に上げやすい食品です。特に飲み物に含まれる糖分は体に吸収されやすく、気づかないうちに血糖を上げてしまうことがあります。一方、例えばコカ・コーラゼロやグリコの80kcalアイスなど糖質を減らしたおやつもコンビニなどで簡単に購入することができます。これらは甘味料が入っているものが多いですが、甘味料は甘さを感じるものの血糖は上げませんのでおやつには適しているとも考えられます。ひたすら我慢するよりは精神衛生上も好ましいと言えます。このようなおやつに含まれる糖質量は様々ですので食べる前に栄養成分表示を確認しておくとよいでしょう。
食べるタイミングも血糖値に影響する
間食は「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」も大切です。例えば、夕食の直前や就寝前に甘いものを食べると、血糖値が高い状態が長く続くことがあります。
一方、昼食と夕食の間に少量のおやつをとることで、強い空腹を防げる場合もあります。空腹の状態で次の食事をとると、つい食べ過ぎてしまうことがあるからです。結果として食事量が増え、血糖値が大きく上がることもあります。
このように、間食は必ずしも悪い習慣とは限りません。食べ方によっては、食事全体のバランスを整える役割を持つこともあります。
「甘いものが好き」という悩み
診療の中でよく聞く言葉に、「甘いものが好きなので我慢できるか心配です」というものがあります。これは多くの方が感じている悩みだと思います。
私がよくお話しするのは、「完璧を目指し過ぎない」という考え方です。人間というもの、我慢すれば我慢するほど、さらにほしくなるという悪循環が形成されることはよく知られており、あまりにも制限しすぎると、結果として反動で食べてしまうこともよくあることです。まずは頻度を減らす、量を半分にする、食べる時間を決める、甘味料入りのおやつを代わりに食べる。そうした小さな調整を積み重ねる方が、結果として長く続くことがあります。
血糖値の管理は短距離走ではなく、長い時間をかけて続く取り組みです。日常生活の中で無理なく続けられる形を見つけることが、体にとっても良い影響をもたらします。
間食を見直すことは血糖管理の一歩
間食は生活の中の小さな習慣のように見えますが、血糖値には意外と大きな影響を与えることがあります。特に健康診断で血糖値が高いと言われた方や、糖尿病の治療を受けている方にとっては、食べ方を少し見直すだけでも変化が現れることがあります。
もちろん、血糖値の管理は間食だけで決まるものではありません。食事全体の内容や量、運動習慣、体重の変化など、さまざまな要素が関係しています。そのため、血糖値が気になる場合には医療機関で現在の状態を確認し、自分に合った食事の考え方を整理していくことが大切になります。
間食は完全にやめるべきものと考える必要はありません。内容や量、タイミングを整えることで、日常生活の中に無理なく取り入れることも可能です。血糖値を上げにくいおやつを選びながら、自分に合った食習慣を見つけていくことが、長く健康を保つための一つの方法になるでしょう。
かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至


