【京都・2型糖尿病】HbA1cを改善するために今日からできる5つの習慣

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長の神内 謙至です。

日々の診療において、2型糖尿病の治療として「HbA1cの数値を何とか下げたい」というご相談を数多くうけております。とりわけ、初めて糖尿病と診断された方や、治療を続けていてもなかなか数値が改善しない方にとって、HbA1cは大きな関心事であると実感しています。
生活習慣病とされている2型糖尿病は決して食べすぎや運動不足によるものではありません。体質が大きい因子であることはこのブログでも何度も説明しています。しかし、今までの生活習慣を無理なく変えられるような状況があるのなら、実践するとHbA1cは大きく変わることもあります。本稿では、明日からすぐに実践できる5つの習慣について、医学的な根拠とともに詳しくご説明いたします。
ただし、何度も言いますが、2型糖尿病は血糖が上がりやすい体質が大きな因子となります。生活習慣を変えるだけではHbA1cは十分に下がらない体質を持った方もおられますし、場合によっては緩徐進行性1型糖尿病のこともあります。まずは、糖尿病専門医による診察を受けることが好ましいです。

HbA1cとは何か、なぜ重要なのか

まず、HbA1cについて簡潔にご説明いたします。HbA1cは「ヘモグロビンエーワンシー」と読み、過去1〜2か月間の平均的な血糖値を反映する指標です。赤血球中のヘモグロビンというタンパク質に、どの程度ブドウ糖が結合しているかを測定するものです。
糖尿病の診断基準では6.1%以上で予備群、6.5%以上が糖尿病型とされています。日本糖尿病学会のガイドラインでは、合併症予防のための目標値を7.0%未満としておりますが、年齢や併存疾患の有無に応じて個別に目標を設定することが推奨されています。
当クリニックにおいても、一人ひとりの生活背景や身体状況を考え、無理のない目標設定を行うよう話し合いながら考えていきます。
それでは、具体的な習慣をご紹介していきます。

習慣1:ベジファースト

最初にご紹介するのは、食事の順番を意識する習慣です。一般に「ベジファースト」と呼ばれ、野菜から食べ始める方法を指します。この習慣のみでHbA1cが0.5〜1.0%改善された方もおられます。
食物繊維を豊富に含む野菜を最初に摂取することで、その後に摂る炭水化物の吸収速度が緩やかになります。これにより、食後の急激な血糖値上昇、いわゆる「血糖値スパイク」を抑制することが可能です。血糖値スパイクは血管にダメージを与え、動脈硬化を進行させる要因となるため、ベジファーストには心血管疾患の予防効果も期待できると考えられます。
具体的には、まず野菜のおかずやサラダを5〜10分かけてゆっくり召し上がっていただきます。次に、タンパク質を含むおかず(魚・肉・豆腐など)を摂り、最後にご飯やパンなどの主食を食べるという順序です。京都の伝統的な懐石料理は、実はこの理にかなった食べ順になっておりますが、日常の食事でも同じ原理を応用することが可能です。
食後血糖値の急上昇を抑えることは、糖尿病治療に限らず、予防の観点からも広くお勧めしたい習慣です。

習慣2:1日10分の食後ウォーキング

2つ目の習慣は、食後の軽い運動です。とりわけ、夕食後30分〜1時間の間に10分程度の軽いウォーキングを行うことで、食後血糖値が低下するということが複数の研究によって示されています。

食後に運動を行うと、筋肉が血液中のブドウ糖を積極的に取り込み、エネルギーとして利用します。この機序はインスリンの作用とは独立して機能するため、インスリン抵抗性を有する方にも有効です。

京都は四季折々の美しい景観を楽しめる街です。鴨川沿いや哲学の道、近隣の神社仏閣の周辺など、ウォーキングに適した場所が数多くあります。

なお、英国ケンブリッジ大学およびロンドン大学の研究では、30分のウォーキングを週5回行っている人は2型糖尿病の発症リスクが26%低下することが示されています。一方で、同調査では運動習慣を持たない人が44%に上ることも明らかとなりました。

運動強度の目安としては、会話が無理なくできる程度の速さで歩くことを推奨します。息が上がるほどの激しい運動は必要ありません。むしろ、毎日継続できる程度の軽い運動のほうが、長期的にはより大きな効果をもたらします。雨天時には室内での足踏み運動やストレッチを取り入れるなど、天候に左右されない工夫も大切です。

習慣3:十分な睡眠の確保

3つ目は、十分な睡眠を確保することです。意外に思われる方もおられるかもしれませんが、睡眠不足や睡眠の質の低下は、インスリン抵抗性を悪化させ、血糖値を上昇させることが明らかになっています。

睡眠時間が6時間未満の方は、7〜8時間の睡眠をとっている方と比較して、糖尿病発症リスクが約1.7倍高いという研究報告があります。加えて、睡眠の質が低下すると、食欲を増進させるホルモンであるグレリンの分泌が増加し、満腹感をもたらすレプチンの分泌が減少するため、過食傾向に陥りやすくなります。

まずは、就寝前のルーティンを確立することをお勧めします。具体的には、就寝1時間前にはスマートフォンやパソコンの画面を見ないようにする、温かい湯船にゆっくり浸かる、軽いストレッチを行うなどが挙げられます。京都の伝統的な生活様式には、実は睡眠の質を高める要素が多く含まれております。

特に注意が必要なのが、夜遅い時間の食事です。就寝の3時間前までに夕食を済ませることで睡眠の質が向上し、翌朝の空腹時血糖値の改善にもつながります。やむを得ず遅い時間になる場合は、消化の良いものを少量にとどめるようにしてください。

習慣4:適切な水分補給

4つ目の習慣は、適切な水分補給です。見落とされがちではありますが、十分な水分摂取は血糖コントロールにおいて非常に重要な役割を果たします。

体内の水分が不足すると、血液が濃縮され、相対的に血糖値が高くなります。また、脱水状態では腎臓からのブドウ糖排泄も低下いたします。一般的には、1日1.5〜2リットルの水分摂取が好ましいですが、心疾患や腎疾患をお持ちの方は、主治医とご相談のうえ適切な水分量を設定してください。

飲み物の選択も重要です。基本は水または茶類とし、特に緑茶に含まれるカテキンには血糖値の上昇を抑制する効果があることが報告されています。一方で、砂糖が含まれる清涼飲料水やフルーツジュースは血糖値を急激に上昇させるのみならず、カロリーも高いため体重増加の原因にもなります。「果物は健康に良い」というイメージからフルーツジュースを多く摂取される方がいらっしゃいますが、果物はそのまま食べる方が良いとされています。

習慣5:ストレスマネジメント

最後にご紹介するのは、ストレスマネジメントです。ストレスと血糖値の関係について、十分にご認識されていない方が多い印象を受けております。

ストレスを受けると、体内でコルチゾールやアドレナリンといったストレスホルモンが分泌されます。これらのホルモンは肝臓からのブドウ糖放出を促進すると同時に、インスリンの作用を低下させるため、血糖値の上昇を招きます。慢性的なストレス状態がHbA1cの悪化の原因となる可能性も否定できません。当クリニックでは生活背景やストレス要因についても丁寧にお伺いし、必要に応じてカウンセリングや専門医へのご紹介も行っております。

ストレスへの対処法は人それぞれではありますが、深呼吸や瞑想、趣味の時間を確保することなどをお勧めしております。京都には静謐な寺社が数多くあり、そうした場所で心を落ち着ける時間を設けることも効果的です。また、信頼できる方に悩みを打ち明けることや、適度な運動もストレスの軽減に役立ちます。

継続こそが最大の鍵

ここまで5つの習慣をご紹介してきましたが、最も重要なのは「継続できるような生活習慣の変更」です。まずは食事の順番を変えることだけを意識し、それが自然にできるようになった段階で食後の散歩を加える、といった進め方が有効です。一度にすべてを変えようとすると、長続きしない場合が少なくないですし、精神衛生上もよくありません。

HbA1cを下げるために生活を変えて頑張っていても、なかなか下がらなかった場合に、さらに生活を変えようと過剰な無理をしてしまうのは決してよくありません。その理由は血糖の上がりやすい体質も大きな因子を占めているからです。

数値が思うように改善しない時期が訪れることもあります。HbA1cは過去1〜2か月の平均値を示す指標ですので、本日始めた習慣の効果が数値に反映されるには時間がかかるものですが、基本的な習慣を長く継続していても、HbA1cがなかなか低下しない場合には、薬の助けを借りることもいいでしょう。

最後に

今回、ご紹介した5つの習慣は、お読みいただいた今この瞬間から始められるものばかりです。糖尿病があろうがなかろうが、これらの習慣を行うことは好ましいのです。まずは1つからでも構いませんので、できることから取り組んでいただければ幸いです。

当クリニックでは、糖尿病治療として、一人ひとりの生活スタイルに合わせた無理のない治療計画を、ともに考えていきます。HbA1cの数値でお悩みの方、1型糖尿病・2型糖尿病についてご相談をお考えの方は、どうぞお気軽にご来院ください。

京都の地で皆さまの健康をお支えできることを、心より願っております。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至