「脂肪肝」と糖尿病の深い関係 | 健診で肝機能を指摘された方へ

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至です。

健康診断で「脂肪肝の疑いがあります」「肝機能の数値が高いです」と指摘され、気になっている方はいらっしゃいませんか。お酒をあまり飲まないのに脂肪肝と言われて、戸惑う方も少なくありません。

脂肪肝は、「お酒の飲み過ぎ」だけが原因と思われがちですが、実際には血糖値や糖尿病と深く関わっています。そして、脂肪肝を「ただ脂肪がたまっているだけ」と軽く考えて放置すると、思わぬ経過をたどることもあります。

本稿では、脂肪肝と糖尿病がどのように関係しているのか、健診の数値の見方、そして脂肪肝と血糖を一緒に改善していく方法について解説します。

脂肪肝とは – お酒を飲まない人にも起こる

脂肪肝とは、その名の通り、肝臓に中性脂肪が過剰にたまった状態を指します。肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、脂肪がたまっても初期には自覚症状がほとんどありません。そのため、健診の血液検査や腹部エコーで偶然見つかることが多いのです。

かつて、お酒を飲まない人に起こる脂肪肝は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」と呼ばれていました。近年では、こうした脂肪肝が代謝の異常(肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧など)と深く関わっていることを反映して、**「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」**という新しい呼び方が国際的に用いられるようになっています。名称の変化そのものが、脂肪肝と代謝・血糖の異常との結びつきの強さを示しているといえます。

つまり、脂肪肝は単なる「肝臓の問題」ではなく、体全体の代謝の状態を映し出すサインでもあるのです。

脂肪肝と糖尿病の「双方向」の関係

脂肪肝と糖尿病の関係で特に重要なのは、両者が双方向に影響し合うという点です。

脂肪肝が糖尿病を招く方向があります。肝臓に脂肪がたまると、肝臓でのインスリンの効きが悪くなります(インスリン抵抗性)。インスリンが効きにくくなると、肝臓は余分にブドウ糖を血液中に放出し、血糖値が上がりやすくなります。このように、脂肪肝はインスリン抵抗性を介して、糖尿病の発症・悪化に関わります。

逆に、糖尿病が脂肪肝を進める方向もあります。血糖の高い状態やインスリン抵抗性は、肝臓への脂肪の蓄積を促し、脂肪肝を進行させます。

実際に、肝臓の組織を調べた研究では、MASLDと診断された方における2型糖尿病の有病率は47%を超えると報告されています。つまり、脂肪肝の方の約半数が糖尿病を合併しているということです。健診で脂肪肝を指摘されたということは、血糖の状態も一度きちんと確認しておくべきサインとも言えます。この点は、痩せていても糖尿病になる「やせ型糖尿病」の話ともつながります。 [リンク:(やせ型糖尿病の記事URL ※公開後に挿入)]

ここでも、当院が繰り返しお伝えしている「体質」の考え方が関わってきます。私は、2型糖尿病を「食事や運動などの少しの変化で血糖に大きな影響が出る体質の病気」と捉えていますが、脂肪肝も同じ代謝の乱れの表れの一つです。特に日本人は、皮下脂肪をため込む能力が低く、痩せていても肝臓に脂肪がつきやすい体質を持つとされています。脂肪肝と血糖の異常は、この「体質」という共通の土台の上にあると考えると理解しやすいでしょう。

「ただの脂肪肝」で済まないことがある

「脂肪肝くらい、よくあること」と考える方もいらっしゃいます。確かに、脂肪肝は多くの方に見られる状態です。しかし、一部の方では、脂肪がたまるだけの段階から、炎症や線維化(肝臓が硬くなること)が進む段階へ移行することがあります。

線維化が進むと、やがて肝硬変や肝がんへとつながる可能性があります。かつては肝硬変や肝がんはウイルス性肝炎や飲酒によるものが中心でしたが、近年は脂肪肝(MASLD)を背景とするものが増えてきています。

そして、ここでも糖尿病が関わります。研究では、2型糖尿病がある方は、糖尿病がない方に比べて、脂肪肝の線維化が進行しているリスクが2倍以上高いと報告されています。また、HbA1cが高い状態が長く続くほど、肝臓の線維化が進みやすいことも示されています。

つまり、糖尿病と脂肪肝が併存している場合、肝臓の状態にもより注意を払う必要があるのです。

健診でどこを見る?

脂肪肝や肝臓の状態を知る手がかりは、健診の結果の中にあります。次のような項目に注目してみてください。

  • AST(GOT)・ALT(GPT)
    肝臓の細胞が傷ついていると上昇します。特にALTが高い場合は脂肪肝が関わっていることがあります。
  • γ-GTP(ガンマGTP)
    お酒の影響で上がることが知られていますが、飲酒しない方でも脂肪肝などで上昇することがあります。
  • 腹部エコー(超音波)検査
    肝臓に脂肪がたまっているかを画像で確認できます。

さらに、肝臓の線維化の進行度を推定するために、年齢・血小板数・AST・ALTから計算する「FIB-4インデックス」といった指標が用いられることもあります。これらを組み合わせることで、脂肪肝がどの段階にあるのかを評価していきます。

健診で肝機能の数値の異常を指摘された場合は、その数値を放置せず、一度医療機関で相談することをおすすめします。

脂肪肝と血糖を一緒に改善する

脂肪肝と糖尿病が深く関わっているということは、裏を返せば、片方を改善する取り組みが、もう片方の改善にもつながるということです。

最も効果が期待できるのが、体重の減量です。研究では、体重の5〜7%程度を減らすことで、肝臓の脂肪が減り、インスリンの効きも改善することが示されています。体重70kgの方であれば、およそ3.5〜5kgの減量が一つの目安です。急激に痩せる必要はなく、無理のない範囲で少しずつ続けることが大切です。

食事の面では、糖質や脂質に偏った食事、清涼飲料水や果糖の多い飲み物を控えることが役立ちます。特に、果糖は肝臓での脂肪合成を促しやすいことが知られています。糖分の多い清涼飲料水の摂り方については、スポーツドリンクをテーマにした記事でも触れています。

運動も、脂肪肝とインスリン抵抗性の両方の改善に有効です。当院では、無理なく続けられる運動の取り入れ方についてもお伝えしています。

糖尿病薬の中で、SGLT-2阻害薬GLP-1受容体作動薬は体重低下作用があり、脂肪肝に対しても有効とされています。ALTやγGTPが高値の方に対してこれらの薬を開始すると、HbA1cや体重だけでなく、ALTやγGTPもどんどん低下してくることがよくあります。

ここで大切にしたいのは、完璧を目指して短期間で無理をするのではなく、無理なく続けられる範囲で取り組むことです。私は日頃から、食事について「何を食べてはいけないか」より「何をどのように摂るか」を大切にしていただきたいとお伝えしています。厳しすぎる食事制限や急激な減量は、長続きしないだけでなく、体に負担をかけることもあります。この考え方は、間食やお菓子との付き合い方の記事でも述べています。

まとめ

脂肪肝は、お酒を飲まない人にも起こり、血糖値や糖尿病と双方向に関わっています。MASLDという新しい呼び方が示すように、脂肪肝は体全体の代謝の状態を映すサインです。そして、糖尿病があると肝臓の線維化が進みやすいなど、両者は互いに影響を及ぼし合います。

脂肪肝と血糖は、減量や食事・運動の工夫によって、一緒に改善していくことができます。大切なのは、無理なく続けられる形で取り組むことです。

健診で気になる数値を指摘された方は、まずは一度ご相談ください。当院では、私自身が1型糖尿病であり、糖尿病専門医も取得しております。脂肪肝と血糖の評価から、無理のない改善の進め方まで、患者さんお一人おひとりの状況に応じた対応を心がけています。もし他のクリニックさんで合わないと感じられた方も、ぜひお気軽にお越しください。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至