「1型糖尿病は子どもの病気」は誤解です 大人になってから発症する1型糖尿病

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至です。

「1型糖尿病は子どもがなる病気」と思われている方は多いと思います。確かに小児期や思春期に発症することの多い病気ですが、1型糖尿病は大人になってからも発症します。30代、40代、あるいはそれ以降に初めて診断される方もおられます。

大人の1型糖尿病は、最初は2型糖尿病と診断され、飲み薬で治療を続けているうちに血糖が悪化して気づかれることもあります。本稿では、大人になってから発症する1型糖尿病について、そのタイプや見分け方、治療について解説いたします。

1型糖尿病は大人になってからも発症します

1型糖尿病は、膵臓でインスリンを作っているβ細胞(ベータ細胞)が壊れ、インスリンがほとんど、あるいはまったく出なくなる病気です。多くは、本来は体を守るはずの免疫が自分の膵臓の細胞を攻撃してしまう「自己免疫」が原因と考えられています。

子どもの病気というイメージが強いのは、小児期の発症が目立つためです。思春期前に発症のピークはありますが、その後、高齢になっても発症率は持続的に続きます。そのため1型糖尿病を発症する人数は20歳前より20歳以降の方が多くなるのです。1型糖尿病は、年齢にかかわらず発症すると考えた方がいいのです。

1型糖尿病と2型糖尿病の違い

2型糖尿病は、インスリンの分泌が少ない、あるいはインスリンが効きにくいという体質を背景に発症する病気です。日本人はもともとインスリンの分泌能力が低い体質の方が多く、太っていなくても2型糖尿病になることがあります。

一方、1型糖尿病は、自己免疫などによってβ細胞そのものが壊れていく病気で、体型に関わらず発症します。

この違いは、治療の考え方に直結します。2型糖尿病では飲み薬から始めることが多いのに対し、1型糖尿病では、出なくなったインスリンを注射で補う治療が基本になります。インスリンが体の中でどのように分泌されているかは、以前の記事でも解説しています。

大人の1型糖尿病には3つのタイプがあります

1型糖尿病は、発症の経過から大きく「急性発症」「緩徐進行」「劇症」の3つに分けられます。大人の場合、いずれのタイプも起こりえます。

急性発症1型糖尿病

のどの渇き、尿の回数や量の増加、体重減少などの症状が現れてから、比較的短い期間でインスリン治療が必要な状態になるタイプです。一般的に「1型糖尿病」と聞いて思い浮かべるのは、このタイプだと思います。

症状に気づかないまま過ごしていると、糖尿病ケトアシドーシス(インスリンが極端に不足し、血液が酸性に傾く危険な状態)に至ることがあります。

緩徐進行1型糖尿病

大人の1型糖尿病で特に知っていただきたいのが、このタイプです。β細胞が数年かけてゆっくりと壊れていくため、発症当初はインスリンがある程度出ており、飲み薬や食事療法で血糖が保てることもあります。

そのため、最初は2型糖尿病と診断されていることがあります。GAD抗体などの自己抗体が陽性であることが手がかりになります。早い段階で病型を正確に把握し、インスリン治療を含めた適切な治療方針を検討することが重要です。治療の開始時期については、緩徐進行1型糖尿病の記事で詳しく取り上げています。

劇症1型糖尿病

数日から1週間前後という非常に短い期間で、β細胞がほぼすべて壊れてしまうタイプです。発熱やのどの痛みといったかぜのような症状や、腹痛・吐き気などに続いて、急に強いのどの渇きや倦怠感が現れます。成人での発症が多いことが知られています。

進行があまりに急なため、HbA1c(過去1〜2か月の血糖の平均を反映する指標)はそれほど高くならないのが特徴です。命にかかわる状態ですので、急な体調の変化とともに、強いのどの渇きや意識がぼんやりする感じがあれば、速やかに医療機関を受診してください。

こんなときは1型糖尿病も考えます

次のような場合は、2型糖尿病と言われていても、1型糖尿病の可能性を含めて検査を考えます。

食事に気をつけているのに体重が減ってきた / これまで効いていた飲み薬で血糖が下がらなくなってきた / 甲状腺の病気など、ほかの自己免疫の病気がある

なかでも、橋本病やバセドウ病といった甲状腺の病気は、1型糖尿病と同じく自己免疫を背景とする病気で、合併しやすいことが知られています。両者の関係は、1型糖尿病と甲状腺の病気の記事でまとめています。

1型糖尿病は体型に関わらず発症するため、糖尿病と診断を受けた方は、まずは1型糖尿病でないかどうかの検査を受けるべきだと考えます。

1型糖尿病を見分ける検査

1型糖尿病かどうかは、主に血液検査で調べます。

一つは、膵島関連自己抗体の検査です。抗GAD抗体・抗IA-2抗体などの自己抗体は、膵臓に対する自己免疫が起きている手がかりになります。陽性の場合は、1型糖尿病、あるいは緩徐進行1型糖尿病の可能性を考えます。

もう一つは、Cペプチドの検査です。Cペプチドは、インスリンが作られるときに同時に作られる物質です。血液や尿で測ることで、ご自身の膵臓からどのくらいインスリンが出ているかの目安になります。

当院では、これらの検査に加えて、これまでの血糖の経過、体重の変化、治療薬への反応などをあわせて確認し、総合的に判断しています。

診断後の治療と生活

1型糖尿病と診断された場合、治療の中心はインスリンです。食事に合わせて打つ超速効型と、1日の基礎になる持効型を組み合わせるのが基本で、インスリンの種類の記事でそれぞれの特徴を解説しています。

注射の方法は、ペン型の注射器だけではありません。インスリンポンプ療法(小型の機器で持続的にインスリンを注入する治療法)を選ぶこともできます。また、持続グルコース測定(CGM)を使うと、血糖の変動を連続して把握でき、インスリン量の調整に役立ちます。

大人になってからの発症では、すでに仕事や家庭での役割があり、生活のリズムも人それぞれです。食事の内容や時間、運動の習慣、仕事の都合などをうかがいながら、その方に合ったインスリンの打ち方や測定の方法を一緒に考えていきます。

【京都】大人の1型糖尿病でお悩みの方へ

当院は京都市中京区、地下鉄東西線二条駅から徒歩3分の場所にあります。1型糖尿病外来を設け、インスリンポンプ療法や持続グルコース測定、カーボカウント法による食事とインスリンの調整にも対応しています。

「2型糖尿病と言われているが、1型ではないか確認したい」「飲み薬を続けているのに血糖が下がらない」といったご相談もお受けしています。1型糖尿病の基本的な情報は、国立国際医療研究センターの糖尿病情報センターでも公開されています。

専門医として伝えたいこと

1型糖尿病は、子どもだけの病気ではありません。大人になってから発症することがあり、特に緩徐進行1型糖尿病は、2型糖尿病として治療されている方のなかに含まれていることがあります。タイプを正しく見極めることが、その後の治療を考えるうえでの出発点になります。

当院では、私自身も1型糖尿病があり、インスリンポンプ療法を続けながら血糖管理を行っています。また、日本糖尿病学会専門医として、糖尿病診療に取り組んでいます。

1型糖尿病の治療や血糖管理について気になることがある方は、お気軽にご相談ください。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至