1型糖尿病の方に甲状腺の病気が多いのはなぜ?「自己免疫」という共通点

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至です。

1型糖尿病で通院されている方が、あるとき甲状腺の病気も指摘される。あるいは、甲状腺の病気で治療中の方が、1型糖尿病を発症する。こうしたことは、決して珍しくありません。

「なぜ、糖尿病と甲状腺という別々の臓器の病気が重なるのだろう」と、不思議に思われるかもしれません。しかし、これは偶然の重なりではなく、両者の背景に共通の仕組みがあるために起こることなのです。

本稿では、1型糖尿病と甲状腺の病気が合併しやすい理由、その鍵となる「自己免疫」という共通点、そして当院での対応について解説します。

1型糖尿病と甲状腺の病気は合併しやすい

まず、実際にどれくらい合併しやすいのかを見てみましょう。

1型糖尿病の方には、バセドウ病や橋本病といった甲状腺の病気(これらをまとめて自己免疫性甲状腺疾患と呼びます)が合併しやすいことが知られています。報告によって幅がありますが、その頻度は17〜30%程度とされています。

この数字がどれほど高いかは、2型糖尿病と比べるとよく分かります。ある国内の報告では、2型糖尿病での自己免疫性甲状腺疾患の合併率が0.8%程度であったのに対し、1型糖尿病では明らかに高い頻度で合併がみられたとされています。つまり、1型糖尿病の方は、そうでない方に比べて、甲状腺の病気を持つ可能性が高いのです。

だからこそ、1型糖尿病の方の診療では、甲状腺のことも念頭に置いておくことが大切になります。

共通点は「自己免疫」

では、なぜ1型糖尿病と甲状腺の病気は、これほど重なりやすいのでしょうか。その答えが「自己免疫」です。

私たちの体には、細菌やウイルスといった外敵から身を守る「免疫」の仕組みが備わっています。ところが、この免疫が何らかの理由で誤作動を起こし、自分自身の体の一部を、外敵と間違えて攻撃してしまうことがあります。これが自己免疫と呼ばれる状態です。

1型糖尿病は、この自己免疫によって、膵臓でインスリンを作る細胞(β細胞)が攻撃され、壊されてしまう病気です。その結果、インスリンがほとんど作れなくなります。

橋本病やバセドウ病もまた、自己免疫によって甲状腺が攻撃される病気です。橋本病では甲状腺が破壊されてホルモンが不足し、バセドウ病では逆に甲状腺が刺激されてホルモンが過剰になります。攻撃のされ方は異なりますが、「自己免疫が甲状腺を標的にする」という点は共通しています。

つまり、1型糖尿病も甲状腺の病気も、「免疫が自分の臓器を攻撃してしまう」という同じ仕組みを背景に持っているのです。免疫にこうした誤作動を起こしやすい素因がある方では、膵臓と甲状腺の両方が標的になることがある、というわけです。

多腺性自己免疫症候群という考え方

このように、複数の臓器に自己免疫による障害が起こる状態は、医学的に「多腺性自己免疫症候群」と呼ばれています。1型糖尿病と自己免疫性甲状腺疾患が合併したものは、このうちの「3型(APS3)」に分類されます。

この病態には、いくつかの特徴が知られています。

  • 体質的な素因
    • 発症には、免疫に関わる特定の遺伝子(HLAという免疫の型を決める遺伝子)が関連していることが報告されています。
  • 女性に多い
    • 男性の3〜4倍の頻度で女性に多いとされています。
  • 緩徐進行1型糖尿病との関連
    • ゆっくり進行するタイプの1型糖尿病(緩徐進行1型糖尿病)では、甲状腺疾患の合併がより多いことが報告されています。

当院では、このゆっくり進行するタイプの1型糖尿病についても専門的に診療しており、こうした甲状腺との関連にも注意を払っています。緩徐進行1型糖尿病については、別の記事でも解説しています。

どんな症状に注意すべきか

甲状腺の病気は、見過ごされやすい面があります。特に、甲状腺の働きが低下するタイプでは特徴的な症状は乏しいです。一般的には次のような症状に注意が必要です。

橋本病(甲状腺の働きが低下するタイプ) では、甲状腺ホルモンが不足することで、体の代謝が落ちます。以下のような症状の方はご相談ください。

  • 疲れやすい、体がだるい
  • 寒がりになった
  • むくみが出る
  • 体重が増えてきた
  • 便秘がち
  • 気分が落ち込む

バセドウ病(甲状腺の働きが過剰になるタイプ) では、代謝が過剰に活発になります。

  • 動悸がする、脈が速い
  • 汗をかきやすい、暑がりになった
  • 食べているのに体重が減る
  • 手が震える
  • イライラする、落ち着かない

注意していただきたいのは、これらの症状が血糖のコントロールにも影響しうることです。甲状腺ホルモンは代謝全体に関わるため、その過不足は血糖値の動きにも影響します。血糖が不安定になったとき、その背景に甲状腺の病気が隠れていることもあるのです。

当院での検査

当院では、1型糖尿病の方に対して、甲状腺の状態にも注意を払った診療を心がけています。

具体的には、甲状腺ホルモン(TSH、FT4など)の血液検査や、必要に応じて甲状腺の自己抗体の検査を行い、甲状腺の機能に異常がないかを確認します。甲状腺の腫れやしこりが疑われる場合には、甲状腺の超音波(エコー)検査で、その状態を詳しく調べることもできます。

1型糖尿病の方は甲状腺疾患を合併しやすいという事実をふまえ、症状がはっきり出る前の段階でも、定期的に甲状腺の状態を確認しておくことが、早期発見につながります。

まとめ

1型糖尿病の方に甲状腺の病気が多いのは、両者が「自己免疫」という共通の仕組みを背景に持っているためです。免疫が自分の臓器を攻撃してしまうという同じ土台の上で、膵臓と甲状腺の両方が標的になることがあるのです。

甲状腺の病気は、症状が糖尿病と紛らわしく、血糖のコントロールにも影響します。だからこそ、1型糖尿病の方は、甲状腺のことも定期的に確認しておくことが大切です。

当院では、私自身が1型糖尿病であり、糖尿病専門医も取得しております。また、糖尿病だけでなく甲状腺の診療にも対応しており、1型糖尿病と甲状腺疾患の両方を見据えた診療を行っています。気になる症状がある方、一度甲状腺の状態を確認しておきたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。もし他のクリニックさんで合わないと感じられた方も、お気軽にお越しください。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至