日本では江戸時代に‶diabetes”は「尿崩」と呼ばれ始めました。当時、‶diabetes”は日本語に翻訳することができず、併記されていたオランダ語の‶pisvloed”が「尿崩」と記されたと考えられます。のちに ‶diabetes”に‶mellitus”がつくと、「尿崩」は「蜜尿證」や「蜜尿病」となり、蜜の成分が糖であることが知られて「糖尿病」とも呼ばれ、1907 年の第4 回日本内科学会講演会後に「糖尿病」に統一されました。
古代西洋で‶diabetes”、東洋で「消渇」と命名された疾病は、日本でオランダ語の‶pisvloed”が「尿崩」と訳されたことで、尿の字が病名に組み込まれた「蜜尿病」「糖尿病」に引き継がれることになったのです。
「尿崩」の元となった‶pisvloed”は母国オランダでは現在ほとんど用いられていません。しかし、日本では‶pisvloed”からの流れを引き継ぎ、‶diabetes mellitus”の和訳として「糖尿病」が現在も用いられているのです。
(羽賀達也他. 糖尿病49. 633-635: 2006より)