インスリン治療の命題-4つの視点 4/5

  1. quality of life (QOL)

2型糖尿病治療において、食事や運動に加えて内服薬を使っている場合には、自己注射に対して強い抵抗感を持つことが多いです。また、特に高齢者など、注射手技の習得に問題のある方は、自分で打てないという問題点もでてきます。そのためにインスリンの製薬会社や注射針の製造会社は注射ができる限り痛くないように、打ちやすいように工夫がなされてきました。そのため、今の自己注射は昔と比べると大変容易に打つことができるようになりました。

それでも、自己注射の治療をしている場合、日常生活で問題が出てくることが多いです。針の恐怖感や注射時の痛み、注射の面倒さについては理解しやすいですが、社会生活において、自宅外ではどこで注射するのか、人に知られたくないという気持ちもあります。注射しなければならないぐらい糖尿病が悪くなってしまったという絶望感を持つ人もあります。自分が自己管理をしてこなかったからこんなになってしまったと罪悪感を持ってしまう場合もあります。また、自己注射を始める場合、家族に心配をかけてしまうのではないかと不安に思うこともあるようです。旅行に行くときにどうすればいいかと不安に思うこともあります。低血糖の不安感も内服薬の時より強くなるようです。

インスリン注射を行うときに、このような負の気持ちでQOLが低下してしまうことがあります。そのため、医療者はその不安感を取り除くためできる限り話し合っていく必要があります。

また、自己注射を行っている体験者から話を聞くことはその不安感を軽減させるのに有効だとされています。