サンフランシスコでの糖尿病臨床見学 その2

このUCSFインスリンポンプ外来で、気になった患者さんがいました。初診で来た、13歳で1型糖尿病を発症した26歳の男性です。うつむき加減で外来に来るのはあまり気が進まなさそうでした。糖尿病教育は今まで受けたことが無いとのこと。これから仕事でスペインに移り住むので1型糖尿病専門の病院を紹介してほしいとのことでした。糖尿病知識としてはポンプの血糖補正を血糖15mg/dl下げるためにインスリン2単位を打つと言っていたり確かに教育は受けていなさそうでした。

外来での検討会では彼の知識の無さに焦点が絞られ、主治医は今後教育を受けるように患者さんに説明していました。(ここでは、外来患者一人に対し診察をした後、別室に入り2-3人の医師でディスカッションするのです。驚きです。)でも彼はスペインに自分で行けるほどしっかりした人なのに、どうして糖尿病についてはこれほど知識がないのだろうか。聞いたところ彼は糖尿病キャンプや勉強会にも参加したことが無く、知り合いに糖尿病を持っている人もいないと言っていました。

彼はまず間違いなく1型糖尿病に対して否定的な考えを持っている。教育も大事であろうがメンタルケアがさらに根本的で大事なことだと思い、私はそのように主治医に説明しました。ただ、UCSFには患者会は全く無いとのこと。メンタルケアの重要性が日本と同様、完全には浸透していないと感じました。日本が遅れているわけではないというほっとした気持ちと、世界中にこのような孤独を感じて生活しているヤング1型糖尿病の方が数多くいるのだというやりきれない気持ちが入り混じって、複雑な感情が残った一日でした。