糖尿病治療の考え方

このブログには、糖尿病臨床についての論文の報告以外にも、私の医師としての糖尿病治療の考え方について、糖尿病についての興味深い逸話など、いろいろなことを書いていく予定です。今回は、私の考える糖尿病治療の基本について書こうと思います。

河合隼雄の「こころの処方箋」より…
ともかく正しいこと、しかも100%正しいことを言うのが好きな人がいる。…煙草を吸っている人には「煙草は健康を害します」と言う。何しろ、誰がいつどこで聞いても正しいことを言うので、言われた方としては「はい」と聞くか、無茶苦茶でも言うより仕方がない。… もちろん、正しいことを言ってはいけないなどということはない。しかし、それはまず役に立たないことくらいは知っておくべきである。… 打席に入る選手に向かって「ヒットを打て」というのは100%正しいことだが、まず役に立つ忠告ではない。… ひょっとすると失敗かもしれぬ、しかしこの際はこれだという決意を持ってするから忠告も生きてくる。己を賭けることもなく、責任を取る気もなく、100%正しいことを言うだけで、人の役に立とうというのは虫が良すぎる。

一般的に糖尿病外来で主治医から、食べ過ぎないようにしなさい、バランスよく食べなさい、おやつは食べないようにしましょう、適度な運動をしましょう、朝食を食べましょう、など、こんな説明がよくあると思います。私自身、そういう言い方を全くしないわけでもありません。でも、このような「100%正しいこと」は役に立たないのです。どのような提案がいいだろうかと医師としてもっと真剣に考えていく必要があるのだと思います。