ACE (Acarbose Cardiovascular Evaluation)試験

αグルコシダーゼ阻害薬(αGI薬)は、小腸におけるαグルコシダーゼ活性の阻害をすることで、消化管でのブドウ糖の吸収を遅らせる薬剤です。吸収が穏やかになるため食後の血糖上昇を穏やかにする効果があります。その結果、インスリンの食後遅延過剰分泌を抑制するため、食後の高インスリン血症を改善させます。つまりインスリン抵抗性を改善させることになるのです。

今まで2型糖尿病患者さんにおいてαGI薬に心血管イベントのリスクを下げるとする報告はありましたが(MeRIA7という報告です)、これはメタ解析であったため信頼性に問題があったのです。メタ解析とは、いくつかの小規模の報告を寄せ集めて一括で解析するというものです。都合のいい報告を選んで解析するという可能性が否定できないのです。

2017年に、中国での前向き二重盲検試験であるACEで耐糖能異常を有する心血管ハイリスク患者において心血管イベント抑制の効果をを認めないとする報告がありました。MeRIA7に比べて信頼性は高く、αGI薬には心血管イベント抑制効果は認めない可能性が高くなります。

ただ、これでαGI薬の有効性がなくなったわけではありません。αGI薬はHbA1cが7%台でもう少し下げたいときに使うとやはりコントロールはよくなります。しかもSU薬をすでに使っている場合にはコントロールがよくなることでSU薬の減量が可能となります。1日3回内服しないといけないのは面倒ですが、心血管イベント抑制効果がないとしてもまだまだこの薬剤の魅力は残っています。

(Holman RR, et al. Lancet Diabetes Endocrinol. 2017 5(11):877-886.)

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