糖尿病のある方のインフルエンザ対策 予防接種と冬の備え

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長 神内 謙至です。

朝晩が涼しくなり、インフルエンザの予防接種の時期が近づいてきました。「糖尿病があっても予防接種を受けてよいのか」「ほかにどんなワクチンを受けておくべきか」といったご質問を、この時期になると多くいただきます。

糖尿病のある方にとって、感染症の予防は、血糖の管理と同じくらい大切なテーマです。本稿では、糖尿病と感染症の関係、受けておきたい予防接種、そしてかかってしまったときの対応について解説いたします。

糖尿病の方が感染症に気をつけたい理由

血糖の高い状態が続くと、細菌やウイルスと戦う白血球の働きが弱まることが知られています。そのため、糖尿病のある方は、感染症にかかりやすく、かかった場合に重症化しやすい傾向があります。

さらに、感染症は血糖そのものも乱します。発熱や炎症があると、体の中で血糖を上げるホルモンが増え、普段より血糖が高くなります。一方で、食事がとれずに血糖が下がりすぎることもあります。感染症が血糖を乱し、高い血糖が感染症を長引かせるという関係にあるのです。

日本糖尿病学会の糖尿病診療ガイドラインでも、糖尿病のある方には、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種が勧められています。

インフルエンザの予防接種

インフルエンザワクチンは、かかることを完全に防ぐものではありませんが、発症を抑えたり、かかった場合に重症化を防いだりする効果が期待できます。

ワクチンを接種してから効果が現れるまでには、2週間ほどかかるとされています。流行が本格的になる前、10月から11月頃までに接種を済ませておくとよいでしょう。また、流行するウイルスの型は毎年変わり、効果も数か月ほどで弱まっていくため、インフルエンザワクチンは毎年接種することが推奨されています。

京都市では、65歳以上の方などを対象に、インフルエンザの定期予防接種が行われています。令和8年度の接種期間は、令和8年10月1日から令和9年1月31日までです。対象となる方や接種料金は、京都市の案内でご確認ください。

65歳未満の方は任意接種になりますが、糖尿病のある方は、年齢にかかわらず接種をご検討ください。

あわせて考えたい予防接種

インフルエンザ以外にも、糖尿病のある方にご検討いただきたいワクチンがあります。いずれも、ご自身の年齢や体調、これまでの接種歴によって適した時期が異なりますので、診察の際にご相談ください。

肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌は、高齢の方の肺炎の原因として多い細菌です。糖尿病のある方は肺炎が重症化しやすいため、接種が勧められています。

定期接種の対象は、65歳の方と、60〜64歳で心臓・腎臓・呼吸器の機能、またはヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に重い障害がある方です。2026年度からは、定期接種で使うワクチンが沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変わり、1回の接種となっています。過去に肺炎球菌ワクチンを接種したことがある方は、定期接種の対象外となる場合があります。詳しくは厚生労働省の案内をご覧ください。定期接種の対象外の方も、任意接種として受けることができます。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹は、子どもの頃にかかった水ぼうそうのウイルスが、加齢や免疫の低下によって再び活動することで起こります。糖尿病のある方は発症しやすいとの報告があり、皮膚の症状が治った後も痛みが長く残ることがあります。帯状疱疹ワクチンは2025年度から定期接種となりました。2026年度は、年度内に65歳を迎える方に加え、経過措置として70・75・80・85・90・95・100歳を迎える方などが対象です。定期接種として受けられるのは対象となる年度に限られます。詳しくは厚生労働省の案内をご覧ください。

RSウイルスワクチン

RSウイルスは、子どもの病気という印象が強いかもしれませんが、高齢の方や持病のある方では肺炎の原因になることがあります。60歳以上の方などを対象としたワクチンがあり、任意接種として受けることができます。

ワクチンとあわせてできる冬の備え

予防接種に加えて、日頃の感染対策も大切です。外出後の手洗い、人混みでのマスクの着用、十分な睡眠など、基本的な対策が感染の機会を減らします。

また、体調を崩したときに慌てないよう、冬の前に準備しておきたいことがあります。食欲がないときでもとりやすいおかゆやうどん、ゼリー飲料などの炭水化物、経口補水液などの水分を、あらかじめ準備しておくとよいでしょう。インスリンを使っている方は、血糖を測る道具やインスリンの残りの量も確認しておいてください。

かかってしまったときは

発熱やのどの痛み、全身のだるさなど、インフルエンザが疑われる症状が出たら、早めに医療機関にご連絡ください。抗インフルエンザ薬は、発症から48時間以内に使い始めることで効果が期待できるとされています。

当院では、発熱などかぜ症状がある方には、来院前に必ずお電話をいただくようお願いしています。感染症の疑いがある方の診察時間を分けて設けていますので、ご連絡の際にご案内いたします。

また、体調を崩したときは、血糖の薬の飲み方や打ち方に注意が必要です。食事がとれないときに休む必要がある薬がある一方で、インスリンは自己判断で中止しないことが原則です。こうした体調不良時の対応は「シックデイ」と呼ばれ、シックデイについての記事で詳しく解説しています。普段から、体調を崩したときにどうするかを主治医と確認しておくことをお勧めします。

【京都】糖尿病の方の予防接種について

当院は京都市中京区、地下鉄東西線二条駅から徒歩3分の場所にあります。インフルエンザワクチンのほか、肺炎球菌ワクチン、帯状疱疹ワクチン、RSウイルスワクチンなどの予防接種を行っています。予防接種は予約制ですので、お電話でお申し込みください。取り扱っているワクチンは、健診・予防接種のページでご案内しています。

糖尿病で通院中の方は、定期の診察の際にあわせてご相談いただくこともできます。

専門医として伝えたいこと

糖尿病のある方にとって、冬の感染症は血糖を大きく乱すきっかけになります。予防接種は、感染症そのものを防ぐだけでなく、血糖の管理を守ることにもつながります。流行の前に接種を済ませ、体調を崩したときの対応も確認しておくことが、冬を乗り切るための備えになります。

当院では、私自身も1型糖尿病があり、インスリンポンプ療法を続けながら血糖管理を行っています。また、日本糖尿病学会専門医として、糖尿病診療に取り組んでいます。

糖尿病のある方の感染症対策や冬の体調管理について気になることがある方は、お気軽にご相談ください。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至