2型糖尿病を治療しないとどうなる?合併症を解説

かみうち内科クリニック(内科・糖尿病内科)院長の神内 謙至です。

外来で糖尿病の説明をしていると、「症状は特にないのですが、このまま様子を見ても大丈夫でしょうか」と聞かれることがあります。健康診断で血糖値の異常を指摘されても、仕事も普段通りできる。食欲もある。さらに仕事や家庭で日常生活を忙しくされている場合、どうしても糖尿病の自己管理については後回しになってしまうかもしれません。

しかし2型糖尿病は特殊な病気です。強い痛みや発熱のような分かりやすい症状が出るわけではない一方で、体の内部では静かに変化が進んでいきます。血糖値が高い状態が何年も続くと、血管が少しずつ傷つき、やがてさまざまな合併症につながることがあります。

特に知られているのが、目・腎臓・神経に関わる合併症です。これらは糖尿病の三大合併症と呼ばれており、診療の現場でも長く注意されてきました。それぞれについて過去にこのブログで詳しく説明しておりますが、今回は改めて網膜症・腎症・神経障害という三つの合併症をまとめてご説明いたします。

血糖値が高い状態が続くと血管に負担がかかる

まず、糖尿病の合併症が起こる背景を少し整理しておきます。

私たちの体には血管が張り巡らされており、酸素や栄養を全身へ運ぶ役割を担っています。太い血管だけでなく、顕微鏡でようやく見えるほど細い血管も数多く存在しています。こうした細い血管は特に繊細で、環境の変化に影響を受けやすいという特徴があります。

血糖値が高い状態が長く続くと、血液の性質が少しずつ変化し、血管の内側に負担がかかります。すぐに症状が出るわけではありませんが、年単位の時間をかけて血管の壁が傷ついていくことがあります。

この変化が起こりやすいのが、細い血管が集中している臓器です。特に影響を受けやすい場所として、次の三つがよく知られています。

  • 目の網膜

  • 腎臓

  • 末梢神経

それぞれの臓器では、血管の変化をきっかけに特有の合併症が生じることがあります。

視力に関わる合併症 ― 糖尿病性網膜症

目の奥には網膜という組織があります。カメラで例えるなら、光を受け取るフィルムのような役割をする部分です。網膜には非常に細かい血管が密集しており、血液から酸素や栄養を受け取っています。

血糖値が高い状態が長く続くと、網膜の血管が傷つき、血流が不安定になることがあります。これが糖尿病性網膜症です。細かい内容はこちらで詳しく説明しております。

この病気の難しいところは、初期にはほとんど症状がない点です。視力は普段と変わらないことが多く、本人が気づかないまま進行することも珍しくありません。診察の際、「目は問題ないと思っていました」と話される方も少なくありません。

進行すると、網膜の血管が詰まったり、もろい新しい血管ができたりすることがあります。そうした血管は出血を起こしやすく、視界がかすむ、黒い影が見えるといった症状が現れることがあります。さらに進むと、視力に大きな影響を及ぼす場合もあります。

ただし、網膜症は早い段階で見つけることができれば、進行を抑えることは可能です。そのため糖尿病と診断された方には、定期的な眼科検査が重要になります。そして、なによりも血糖の適切な管理が網膜症の進行予防には重要です。

自覚症状が少ない腎臓の病気 ― 糖尿病性腎症

腎臓は血液をろ過して老廃物を尿として排出する臓器です。体の水分やミネラルのバランスを整える役割もあり、健康を維持するうえで欠かせない働きをしています。

腎臓の内部には「糸球体」と呼ばれる小さなろ過装置が数多く存在しています。ここでも細い血管が複雑に絡み合っており、血液を濾過する仕組みになっています。

糖尿病では、この糸球体に長い時間負担がかかることで、徐々に機能が低下していくことがあります。これが糖尿病腎症です。こちらも細かい内容についてはこちらをご確認ください。

腎症の特徴の一つは、初期には体調の変化がほとんどないことです。むくみやだるさといった症状が現れる頃には、すでに病気が進んでいることもあります。そのため、定期的な尿検査がとても重要になります。

尿検査では、尿の中にたんぱく質が出ていないかを確認します。腎臓のろ過機能が弱くなると、本来は体内にとどまるはずのたんぱく質が尿に漏れ出ることがあります。これが腎症の早期サインになる場合があります。

もし腎機能の低下が進行すると、体内の老廃物を十分に排出できなくなり、透析治療が必要になるケースもあります。しかし、血糖や血圧を適切に管理することで進行予防につながるのです。

足のしびれなどに関係する神経障害

もう一つの代表的な合併症が神経障害です。詳しくはこちらからご確認ください。

神経は、触った感覚や温度、痛みなどを脳へ伝える役割を持っています。また、筋肉を動かす信号を送る働きもあります。

血糖値が高い状態が続くと、神経そのものや神経周囲の血管に影響が及ぶことがあります。その結果として起こるのが糖尿病神経障害です。

症状として比較的よく見られるのは、足先のしびれや感覚の変化です。最初はわずかな違和感から始まることが多く、「足の裏に薄い紙が貼り付いているような感じ」と表現されることもあります。進行すると、痛みや灼熱感を感じる場合もあります。

さらに進行すると、しびれや違和感などの感覚が鈍くなってしまいます。足に傷ができても気づきにくくなり、小さな傷が治りにくくなることがあります。こうした理由から、糖尿病では日常的に足の状態を確認することが大切とされています。そしてなによりも、神経障害の進行予防には血糖の適切な管理が重要です。

合併症はどのくらいで起こるのか

患者さんから「どのくらい放置すると合併症が出るのですか」と聞かれることがあります。この質問には一つの答えを示すことが難しいのが実情です。

血糖値の高さ、体質、他の病気の有無などによって進行の速度は大きく変わるためです。数年で変化が見られる人もいれば、長い間大きな問題が起きない人もいます。

ただし、診療の現場で感じるのは、健康診断で異常を指摘されて何年も経ってから受診された場合には、すでに合併症が出始めていることがあるという点です。症状がなくても、検査では変化が見つかることがあります。

そのため、糖尿病では「症状が出てから対応する」という考え方よりも、「変化が小さいうちに管理する」という姿勢が重要になります。

まずは糖尿病専門医の受診を

ここまで2型糖尿病の合併症について説明してきましたが、実際の診療ではもう少し柔軟に考える必要があります。血糖値の異常が見つかったからといって、すぐに重い合併症が起こるわけではありません。

健康診断で血糖値がやや高い段階であれば、食事や運動など生活習慣の調整によって改善する場合もあります。また検査を詳しく行うと、糖尿病ではなく境界型と呼ばれる状態であることもあります。一方で、精査を行うと、緩徐進行1型糖尿病疑いと判明する場合もあります。2型糖尿病との判別は医療機関を受診することで初めて可能になり、その場合には治療法が全く変わってきますので、まずは糖尿病専門医により診てもらうほうが好ましいと言えます。

2型糖尿病は、早い段階で対応すれば将来の合併症のリスクを下げられます。健診結果で気になる数値があった場合には、一度医療機関で相談してみてください。今の状態を確認しておくことが、将来の健康を守るための大きな助けになることがあります。

かみうち内科クリニック 院長 神内 謙至