Barker仮説

英国の統計で、64歳の男性集団で2型糖尿病または耐糖能異常に対するリスクを出生時体重別に比べると、最小体重群は最大体重群の6倍以上リスクが高くなっていました。冠動脈疾患患者における標準的死亡率も出生時体重が大きいほど低く、小さいほど高かったのです。また、高血圧についても同様に出生時体重との関連が見られました。

Barker仮説とは胎児成長遅滞があると胎児内でのprogrammingの変更によりインスリン抵抗性が生じるというものです。遺伝的・体質的に規定されたインスリン抵抗性に加え、母体・胎盤側の要因も存在するのではないかとのことです。つまり、妊娠中に低栄養状態であると、その環境におかれた胎児は出生後も低栄養状態になる可能性を踏まえ、血糖ができるだけ下がらないようなprogrammingの変更がなされるのです。

この仮説は現在でも正しいと証明されたものではないですが、もし、この仮説が正しいとすると、妊娠中よりも出生後の生活環境が高栄養状態になると、糖尿病発症のリスクが高まることとなります。妊娠中の体重増加があまりも顕著だと妊娠高血圧症候群を引き起こすなど、問題であることが以前より知られていますが、同時に妊娠中の極端な減量をすることも問題になりうるのです。

(Barker DJ, Osmond C. Lancet. 1986 May 10;1(8489):1077-81.)

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